難民からエンジニア インターンへの素晴らしい旅路

羊飼い、ラクダ飼い、難民、そして大学生という型破りな経歴を持つHassanは現在、電気エンジニアとしての新たなキャリアを歩み始め、いつの日か自分の専門知識を共有して、母国チャドのコミュニティに良い影響を与えたいと考えています

30 7月 2024

Hassan Eissaがリビアのトブルクで受けた尋問は、彼の人生の転換点となりました。

Hassan は何百頭ものラクダを連れ、故郷のチャドからリビアまでサハラ砂漠を横断する危険な旅を終えてまもなく、自分が内戦の真っただ中にいることに気が付きました。リビア人警備兵による拘束と尋問は、予想外のものでした。

「警備兵に連れて行かれた部屋で、友人と私はさまざまな質問をされました」と Hassan は語ります。「とても怖かったです。警備兵のうち 1 人が私たちに銃を向けていました」

当時 10 代だった Hassan とその友人は、自分たちは単なるラクダ飼いのキャラバンで、内戦に加わるパルチザンではないと警備兵を納得させ、ようやく解放されました。2 人はすぐに東のエジプトに向かい、たどり着いた国連の難民キャンプで、その後の 3 年間を過ごしました。

 

あらゆる状況に適応

学校教育を受けずに羊飼い、ラクダ飼い、難民、大学生、大学生エリートランナー、そして電気エンジニアとしての新たなキャリアを歩み始めた今日の人生に至るまで Hassan の人生にわたる旅は、どのような基準から見ても注目に値します。Hassan は、ロチェスター工科大学にて学士課程を修了するまで、2400人を超える学生の一人として、TI の半導体パッケージング チームのインターンとして夏を過ごし、テクノロジーの未来の形成に貢献していました。

成功の秘訣は何だったのでしょうか。

「私は忍耐強く、決断力があり、どのような環境にも適応できます」と Hassan は語ります。

周りの環境に適応することは、Hassan が幼い頃に学んだことです。

彼は、アフリカ中北部のチャドという国で、遊牧を生業とする大家族の家庭に生まれました。一家は広々とした牧草地に家畜を連れて行って放牧し、季節の変化に合わせて果物や作物を育てていました。家族や家畜の飲み水として最も近くにある水源の井戸まで往復 60 マイル (約 96.5km) 、バケツに水を汲み、歩いて運んでいました。

「幼い頃は、姉妹たちと一緒にヤギを連れて真夜中に出発し、井戸まで歩いて水を汲みました。村に戻る頃には翌日の夕方になっていたものです」と Hassan は語ります。

2007 年、Hassan はラクダ飼いのキャラバンに加わり、チャドとリビアの間にある砂漠を越える危険な旅を数年間にわたって経験しました。そして内戦と拘留が、Hassan の人生の道筋は変化させました。

「私たちはラクダを失い、築いてきたすべてのものを失いました」と Hassan は語ります。「とても恐ろしい目に遭い、この国を出なければならないと考え始めました。もう安全な状況ではありませんでした」

難民キャンプでの生活は、決して楽なものではありませんでした。


米国に移住する前までの 3 年間を国連の難民キャンプで過ごした Hassan

 

「何が起きているのかは誰にもわかりません」と Hassan は語ります。「ですが、いつの日か別の国に行って仕事を見つけたいと願っていました」

 

エンジニアとして進むべき道

国連によって米国への移住者に選出されたことで、Hassan の夢は実現しました。学校教育を受けておらず、英語も話せませんでしたが、Hassan には学習への強い意欲がありました。

Hassan は米国メリーランド州のボルチモアで英語の授業を受け、優秀な成績を収めました。見習い電気エンジニアの助手として、General Educational Development (GED) 資格を 3 年で取得しました。

指導者のサポートにより、ハーフォード コミュニティ カレッジへの入学が認められ、そこで普通科の準学士号を取得しました。また、クロスカントリー チームのランナーとして競技にも参加しました。電気エンジニアとしての実践的な経験を積んだことにより、Hassan はロチェスター工科大学で電気工学を専攻し、引き続き勉学に励むことができました。

 「子供の頃はテクノロジーに触れる機会が限られていましたが、懐中電灯で遊んだり、電池から電力が供給されて電球が点灯する様子を見たりするのは大好きでした」と Hassan は語ります。「昔から実践的なことが好きだったので、電気工学の道に進んだのは自然な流れでした」

 

キャリアの形成

2022 年の大学生向け就職フェアで、Hassan は TI の採用担当者と知り合い、TI のダラス本社でのサマー インターンシップに応募するよう勧められました。面接後に Hassan はオファーを受け入れ、荷物をまとめてテキサス州へ向かいました。

Hassan によれば、ユニークな子供時代が、この機会に備えるのに役立ったのだと言います。

「それは忍耐強さと、ここにたどり着くまでに経験してきたすべてのことです」と Hassan は語ります。「どのような人とでも協力でき、自分の経験や視点を気兼ねなく共有できます」

大学 4 年生になった Hassan は、TI での経験を通じて、工学および半導体業界の知識をさらに深めました。Hassan は、TI での学習体験は驚くべきものだったと語ります。

「TI には、素晴らしい人たちがたくさんいます」と Hassan は語ります。「インターンシップを通して、マネージャから同僚の方々全員が私をサポートしてくれました。私の質問に快く答え、フィードバックを提供してくれる彼らの姿勢は、私がプロフェッショナルとして成長、進歩していくうえで、非常に貴重なものでした」

Hassan は、お客様の課題解決に役立つ半導体パッケージング テクノロジーの開発や分析など、重要なプロジェクトに積極的に取り組みました。また、インターンシップをきっかけに、ラボでの実務経験の機会も得られ、工学の知識をさらに深めることができました。

テキサスの暑さにも負けず、Hassan は夏の間中、規律あるランニングを続けました。もう学校での競技として走ることはありませんが、彼の競争心は衰えていません。最近はハーフ マラソンに参加し、5 分 38秒の完走ペースで男子の部で1位を獲得しました。次の目標は、2024 年のボストン マラソンへの出場権を獲得することです。

故郷での将来を形作る

Hassan は、TI と学校で培ったスキルや知識を活用し、チャドのコミュニティでの生活を改善させたいと考えています。

「私は子供の頃、とても苦労しました」と Hassan は語ります。「その苦労を、次世代の子供たちに経験させたくありません」

Hassan は、卒業後にチャドを訪れる計画を立てています。目標は、太陽光エネルギーを動力源とする自動給水ポンプを設計し、故郷の村人たちの飲用水へのアクセスを改善することです。

「ここにいて豊富な知識を身に付けるのは素晴らしいことです」と Hassan は語ります。「しかし、その知識を還元しなければ、成功したことにはなりません。私にとっては、故郷のコミュニティに影響を与えることができて初めて、本当に成功したと言えるのです」