ファクトリからその先へ、より良い世界の実現に役立つロボット技術

かつて未来のビジョンであったロボットが、あらゆる環境において人間の生産性、効率、安全性の向上に貢献

01 12月 2023

ロボット技術とそれを支える半導体の進歩は、私たちの生活の効率向上に役立っています。ファクトリの現場からオフィスや家庭のリビング ルームに至るまで、さまざまなロボット システムは生産性の限界を再定義し、私たちが互いに、そして身の回りの世界とどのように関わるのかを再構築しています。

「今から 50 年以上前に最初の産業用ロボットが導入されて以来、私たちは常に進歩を続けてきました」と、TI でロボット システム マネージャを務める Matthias Thoma は語ります。「ロボットはよりインテリジェントになり、精度を高め、周囲の環境への応答能力を向上させてきました。その結果、人間とのより緊密な連携を実現できるようになりました」

Matthias は、家電製品、ビル オートメーション、リテール オートメーション事業部のゼネラル マネージャを務めるGiovanni Campanellaと 、Arm® Cortex® をベースとするマイコン製品ライン マネージャのMike Pienoviとのラウンドテーブルで、ロボット システムの革新が急速に進む現在の状況について話し合いました。

ロボット技術のトレンドに関するMatthiasたちのラウンドテーブルで議論された 3 つのポイントを紹介します。

 

1. 近代的なファクトリの再構築に役立つ移動型ロボット

現代社会の需要に対応するため、ファクトリはそこで働く人間のオペレータにとって、より効率的、より良くつながり、より安全な場所である必要があります。移動型ロボットの進歩は、既存のファクトリを最適化すると同時に、未来のファクトリを再構築するのに役立ちます。

「ファクトリは従来、組み立てラインに沿って移動する大規模なベルト コンベヤを中心に設置されてきました」と、Matthias は語ります。「ロボット移動型のプラットフォームは現在、製品の構成に基づき、ファクトリ内のステーションから別のステーションへと移動することができます。その結果、製造プロセスのボトルネックが軽減され、フレキシビリティが向上しています」

これらの移動型ロボットは通常、自律的なナビゲーション機能を活用し、時には他のロボットや人間と近接した状況で動作します。混雑したファクトリの現場で安全にナビゲーションを実行するには、カメラとレーダー、また LIDAR や超音波センサを組み合わせる必要があります。

「目隠しをして新しい領域に足を踏み入れる状況を想像してみてください。何かにぶつかってしまう可能性は高いでしょう」と、Giovanni は語ります。「センサのないロボットが経験するのは、まさにそのような状況です。そのようなロボットは高い水準の環境把握能力と冗長性を実装する必要があります。また、数個のセンサを搭載するだけでは不十分です。環境の全体像を把握できるように、ロボットは複数種類のセンシング テクノロジを組み合わせて採用する必要があります」

 

2. 人間とロボットのより緊密なコラボレーションに不可欠な機能安全

協働ロボット (コボット) は新しいロボット アプリケーションではありませんが、ファクトリ全体や、人間といっそう近接した場所での使用が増え続けています。コボットを採用して反復的な業務を自動化することで、人間の生産性は向上しますが、安全性とセキュリティに関する新たな検討事項が生じます。

「安全性の観点からは、速いペースで変化するファクトリ環境では、状況把握に関する多数の「主導権」、つまり多様な対応能力をロボットが発揮する必要があります」と、Mike は語ります。「人間の行動は予測可能ではありません。そのため、人間の周囲で動作する機械は、人間の存在を認識し、適切に対応する必要があります。機能安全は、この種のシステムにとって設計上の重要な検討事項です」

自らの環境を評価し、安全な方法で対処できるコボットを設計するには、他のロボット システムが採用している基礎的なテクノロジ、つまり複数のモードを採用した多様なセンサに頼る必要があります。これらのセンサは、高精度のセンス、信頼できる動きを実現する高精度モーター制御、信号を迅速に伝達するリアルタイム通信を実施するのに役立ちます。

 

3. リビング ルームから地球を周回する人工衛星まで、私たちの生活向上に貢献するロボット

「近い将来、ホテルのチェックインや、レストランでの注文の際に、ロボットと対話することはごく普通のことになるでしょう」と、Giovanni は語ります。「私たちは既に、ファクトリ以外の環境でもロボットが多く活用されているのを目にしてきました。最も一般的なのは、ロボット掃除機とセルフレジ(セルフサービス キオスク) です。ロボットは、私たちの世界のあらゆる分野をさらに向上させる可能性を秘めています」

家庭やレストライン以外にも、火山や宇宙など、人間が安全にアクセスすることのできない過酷な環境でもロボットは既に使用されています。

ロボットは、より多くの医療現場にも進出しています。「ロボットは、より高精度な動作が要求される状況でも業務を実施しています」と、Matthias は語ります。「たとえば外科用ロボットは、場合によっては数ミリメートル以内の非常に小さな動作が必要な低侵襲外科出術を既に実行しています」

革新的な半導体は、新しいロボット アプリケーションの中核にあり、精密かつ電力効率の優れたモーター制御、高精度のセンシング、信頼性の高い有線およびワイヤレス接続の実現に貢献しています。

 

ロボットの未来

現代のロボット工学の進歩により、かつては SF の世界でしか実現できないと考えられていた未来に私たちはかつてないほど近付いています。その未来を目指す旅路は、まだ始まったばかりです。ロボットの迅速性、インテリジェント化、低コスト化が進むにつれて、私たちの生活にロボットを応用できる可能性はより高まり、人々がより安全で、より生産性の高い生活を送るのに役立つでしょう。