より持続可能なエネルギー エコシステムの構築

エネルギーを効果的かつ効率的に捕捉、変換、分配するテクノロジは、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行を可能にし、持続可能な未来の創造を支援します

20 9月 2023

ソーラーエネルギーと高電圧バッテリは、かつては家庭や自動車への電力供給として利用され、ごく一部の人たちが使用する例外的な存在でした。ところが現在、これらの技術はかつてないほどに普及しつつあり、以前よりも身近なものとなっただけでなく、よりスマートかつ効率的になっています。

「およそ10年後には、世界の多くの地域でソーラーエネルギーが最大のエネルギー源になるでしょう」と、TIでグリッドインフラ事業部のゼネラル マネージャを務めるHenrik Mannessonは語ります。「再生可能エネルギーへの移行により、エネルギーの生成、消費、蓄積する方法が転換期を迎えています」

最近開催されたラウンドテーブルで、HenrikやTIの専門家は、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行が進む中、そのトレンドや課題、エネルギーの相互運用性の重要性、そして、TIのテクノロジがいかに重要な役割を果たしているかについて説明しました。

「新しいテクノロジを活用し、より多くのエネルギーを持続可能かつ手ごろな価格で入手できるようにすると同時に、それらのより高い信頼性と安全性を実現できるように懸命に取り組んでいます」と、TIのバイス プレジデント兼 高電圧パワー事業部ゼネラル マネージャを務める Kannan Soundarapandianは語ります。

再生可能エネルギー エコシステムを構築する際に、革新的なテクノロジを活用する5つの方法をご紹介します。

1.  ソーラーエネルギーを安全かつ効率的に活用

「地球上の1平方メートルあたり、太陽光から平均でおよそ1kWの電力が得られます」と、Kannanは語ります。「そのエネルギーをできるだけ多く、効率的に抽出するためには、ソーラーパネルとその周辺で、新しい高電圧テクノロジが必要です」

窒化ガリウム(GaN)FETのようなTIの先進的なテクノロジは、ソーラーパネルから出力されたDC電力を、家庭で使用するAC電力へ変換する際に役立ちます。小型で安価なマイクロインバータを設計し、直接パネルに、またはその付近に取り付けることが可能になります。

 

2.EV充電の高速化と信頼性向上

「高い安全性と信頼性を保ちながら、高速に自動車を充電できる、より多くの充電ステーションが必要です」と、Henrikは語ります。「充電ステーションへのアクセス増加をサポートする1つのトレンドは、充電に関するハードウェアとソフトウェアの規格を策定し、多様な自動車をさまざまな充電ステーションに接続できるようにすることです。TIはすでに、新しい充電規格に基づく設計を簡素化するツールを、自動車メーカーと充電器メーカーに提供しています」

TIは、AM625プロセッサCC3301 Wi-Fi®コンパニオンICを通じて、充電プロセスへのインテリジェンス向上を支援しています。「EVが充電ステーションと通信を行うことで、充電ステーションは自動車にどれだけの充電量があるのか、また今後数時間のうちにどれだけの充電量を必要としているのか把握することができます」と、彼は語ります。

 

3.  必要なときに必要な場所で使用できるようにエネルギーを蓄積

「太陽光が出ていないとき、エネルギーのニーズは高くなります」と、バッテリ管理システムの製品ライン マネージャを務めるMatt Xiongは語ります。つまり、太陽光や他の種類の再生可能エネルギーをバッテリに蓄積し、後で使用する需要が高いということです。残念ながら、エネルギー ストレージシステム (ESS) で一般的に使用されているリチウムイオン バッテリは、過充電への耐性が低く、過熱による損傷と安全上のリスクにつながる可能性もあります。

「各バッテリセルの効率と電力容量をどのように最大化するかが課題となっています」と、Mattは語ります。「重要なのは、充電レベル、充電レート、バッテリ温度を高精度かつインテリジェントな方法で監視することです。バッテリに充電した電力と、放電した電力を効率的に測定することが重要です。測定精度が高くなるほど、多くの電力容量をバッテリから安全に取り出せます」

TIは、業界をリードするセンサ テクノロジとマイコンをベースとして、さまざまな監視ソリューションを取り揃えています。加えて、GaN半導体は、スイッチングの高速化と損失低減を実現し、バッテリ内とバッテリ周辺にある多くの部品に対して性能と効率を向上させることができます。

 

4.  家庭のエネルギー エコシステムでインテリジェントな制御を実現

再生可能エネルギーへのエネルギー移行において、EV充電、ソーラーエネルギー、エネルギー ストレージの各システムの改良は不可欠です。これら3つの要素をインテリジェントな制御の下で統合することで大きな利点をもたらします。

「今日、私たちが家庭用ネットワークでデータを使っているのと同ことが、エネルギーを使って始めることができます」と、Kannanは語ります。「つまり、家庭のエネルギー ニーズを満たしながら、安全かつ効率的に、しかも最小コストでエネルギーの生成、伝送、蓄積、消費を実現できます。家庭のエネルギー エコシステム内で、個別の要素を関連付ける必要があります。例えば、EVもこのエコシステムの一部です。その場合、EVは単なる自動車であるだけはなく、100kWhの電気容量のバッテリでもあるのです」

ソーラーパネルが発電する電力が家庭の消費量を上回っている場合、余剰電力を家庭の ESS だけでなく、EV のバッテリにも供給します。この電力は、夜間や曇りなどの日に、双方向のスマート スイッチ テクノロジ経由で家庭向けのエネルギーとして利用することができます。今後、将来的に新しく登場するエネルギー関連規格により、デバイスや家電製品がヒートポンプなどの家庭用エネルギー エコシステムに接続され、エネルギー効率がさらに向上するでしょう。

 

5.  ダイナミックで洗練されたエネルギーネットワークの構築

電流センサ、マイコン、パワー コンバータ、高電圧絶縁素子などのTIの多くのテクノロジは、家庭のエコシステム開発を支援します。「これらは、インテリジェンスとコネクティビティのレイヤを追加し、柔軟性、効率性、制御を実現します」と、Kannanは語ります。「発電、蓄積したエネルギーをジュール単位のわずかな量まで、最大限活用することができます」

「統合とスマート制御機能は、家庭の枠を超え、最終的には電力網(グリッド)にも広がります」と、Henrikは語ります。「次世代のスマート電力メーターは、家庭用ソーラー パネルで発電した電力をどのタイミングで貯蔵し、いつEVを充電し、いつグリッドに売電するのかを決定することができるようになるでしょう」、と彼は語ります。「グリッドのインテリジェンスは家庭のインテリジェンスと協調して動作し、変動するエネルギー価格やグリッドの電力容量から、自動車の使用パターンや天気予報まであらゆる要素を考慮に入れ、最小のコストで最大限にエネルギーを活用できるようになるでしょう」

「エネルギー ネットワークが高度化し、より多くのアプリケーションがネットワークをうまく活用できるようになります。その結果、インターネットがもたらしたような成果を達成するようになるでしょう。当初、インターネットは複数のコンピュータを結びつける1つの手法にすぎず、その後、当初の想定を大きく上回る巨大な存在になることは誰も予期しませんでした」と、Kannanは語ります。「エネルギー エコシステムの活用で何を達成できるのか、正確に予想することはできません。それでも私は、インターネットと同じような素晴らしい成果を達成できると考えています」