2013年02月27日
SCJ-13-017
2013年2月27日
日本テキサス・インスツルメンツは、これまで数週間から数カ月かかっていたモーター制御システムの調整を迅速に完了し、開発作業を製品の差別化に集中させる、新型のInstaSPIN™-FOC (フィールド・オリエンテッド制御)ソリューションを発表しました。この新製品を使うことで、設計者は三相、同期または非同期型の各種モーターの同定、調整、および様々な速度および負荷に対し、思い通りの制御を、5分以内で実現できます。この新規テクノロジは、モーターのメカ式な回転センサが不要となり、システム・コストの削減に役立つほか、TIの『C2000™』 Piccolo™ 32ビット・マイコン のROM(読み出し専用メモリ)内に組み込まれた、磁束、角度、速度およびトルクを計測するTIの新しいFAST™ソフトウェア・エンコーダ(センサレス・オブザーバ)アルゴリズムによって、動作を向上します。このInstaSPIN-FOCは、先に発表されたInstaSPIN-BLDCテクノロジ に加え、また将来、より容易かつ効率的にモーター制御の開発を実現する、新しいバージョンのInstaSPINソリューションも発表される予定です。
モーター・システムの信頼性および効率を向上
センサレスFOCモーター技術は、多くのシステム上の利点を持つ一方、多くの業界で、モーター制御システムの豊富な知識を必要とすることから、この技術の使用および採用が遅れていました。InstaSPIN-FOCは、モーター制御の経験の少ない技術者向けにも、開発のしやすさと同時に、システム・コストの削減および複雑さを緩和し、多様な速度および負荷のモーター・アプリケーションにおいても、モーターの効率、性能および信頼性を向上する価値のあるソリューションを提供します。従来のFOCモーターの設計では、メカ式の回転センサを使用する場合、センサ、電源、特殊な配線およびコネクタ、実装および保守などのシステム・コストを増加させるとともに、過酷な環境における性能の低下のほか、電気ノイズ、温度および湿度などによって、信頼性が低下するおそれがありました。さらに、密閉されたコンプレッサや大型の牽引機器など多くのアプリケーションでセンサを実用的に使用することができませんでした。
InstaSPIN-FOCテクノロジの主な特長と利点
パッケージ、供給および価格について
現在、InstaSPIN-FOCに対応した、90MHz動作、32ビット浮動小数点演算機能を備えたPiccolo 『F2806xF』マイコンを出荷中です。10,000個受注時の単価(参考価格)は、6.12ドルより設定されています。今後、InstaSPIN-FOCは、その他の数種類のPiccolo マイコン製品でも供給される予定です。最新のInstaSPIN-FOCによるモーター設計を迅速に開始できる低電圧、低電流モーター制御キット『DRV8312-69M-KIT』は(参考価格)299ドルで供給中です。また低電圧、高電流モーター制御キット『DRV8301-69M-KIT』を同299ドルで供給中です。また、高電圧モーター制御キット『TMDSHVMTRINSPIN』を同699ドルで供給中です。既にTIのモーター制御開発キットを購入済みのお客様には、InstaSPIN™-FOC対応のPiccolo controlCARDである『TMDSCNCD28069MISO』を同99ドルで供給します。
TIのInstaSPIN-FOCおよびモーター制御ソリューションに関する情報は、こちらからも参照できます。TIのモーター制御ソリューション
お客様からのInstaSPIN-FOCに関するコメント
Contronics社は、より良い地球に寄与する技術の開発と機器製造を行っています。同社のスーパーマーケット向けの効率的なミスト・システムは、使用エネルギーを80%も削減すると同時に、食品の新鮮さを2倍長持ちさせ、大きな成功を収めています。また、同社は永年に渡って換気ファンのコントローラを供給してきた実績を持つとともに、業界を変容させる新製品である「CoMoCo」 Intelligent Motor Controlを発表しました。同社に関するビデオは、こちらから参照できます。
Conrtonics社マネージング・ディレクタFrank Bakker氏
「”CoMoCo”はTIのPiccoloマイコンおよびInstaSPIN-FOCテクノロジを搭載した、世界最小のファン向け電子駆動装置です。PowerWarpモードを内蔵していることから、消費電流を常時必要な最小限まで削減し、従来と同様の回転速度および指定の空気流量を保ちながら、ファンの消費電力を280Wから10Wまで削減できました。これによって、当社の14カ月に及ぶフィールド試験では、エネルギー全体をトライアック制御と比較して80%節約、またPowerWarpモードをOFFにした状態のInstaSPIN-FOCテクノロジと比較して50%節約できました。速度およびトルク情報を提供するFAST™エンコーダの高精度信号は、ファン自身を速度および空気流量のセンサとして使います。これによって、動的性能の向上、高価なハードウェアの削減および、実装の簡素化を実現できました」
Royal Dutch Gazelle社は最も古く、かつ高い評価を得ている自転車メーカーの一社です。
同社の母国であるオランダでは、自転車乗車は、運動やレクリエーションのみならず、一つの生活様式となっています。同国および世界の一般消費者が、自転車による移動範囲が広がり、移動しやすさを求めるようになるにつれ、電動アシスト自転車は、同社の民生向け製品の売上の20%を占めるようになりました。同社に関するビデオは、こちらから参照できます。
Royal Dutch Gazelle社エレクトロニック・イノベーション・マネージャErwin Van Norel氏
「TIのPiccoloマイコンによるInstaSPIN-FOCソリューションは、非常に堅牢で、低速、高トルク性能を提供することから、当社では、より静かで小型のダイレクトドライブ・モーター製品を実現できました。さらに、モーターの同定および自動の調整機能によって、当社は、新しいモーターをすぐに試験することができました。とりわけ重要なことは、動作するモーター駆動システムをただちに入手できたことです。これによって当社の技術者は、優れたFASTソフトウェア・エンコーダから得られる非常に高分解能の速度およびトルク信号を活用し、さらなる運転者の支援をはじめ、革新的な機能の開発に集中できました」
e-Traction社は、 電気による路面走行に特化した会社であり、電気による動力伝達系の効率を向上し、二酸化炭素の排出、騒音、環境汚染および化石燃料への依存を削減する目標に沿って、バス、塵芥収集トラック、旅客用自動車などの特殊な車両向けの電気モーターおよび駆動向けソリューションを供給しています。同社に関するビデオは、こちら から参照できます。
e-Traction社エレクトロニクスおよびソフトウェア・エンジニアリング担当、デパートメント・マネージャGeert Kwintenberg氏
「あらゆるモーターの種類、電力範囲および、様々な速度ならびに負荷条件に渡って、センサレス制御を可能とするInstaSPIN-FOC、およびFASTソフトウェア・エンコーダを搭載したTI Piccoloマイコンで、車両の電動化の世界を実現しました。当社では、高電圧、可変電流の非同期ポンプ、コンプレッサおよびスターター・ジェネレータなどの製品に同様のソフトウェア・ソリューションを使用しています。当社では、旅客用車両およびバス向けのイン・ホイール式同期モーター製品からメカ式センサを取り外したことで、安全性および信頼性の向上と同時に、開発上の大きな困難となる原因を排除しました。InstaSPIN-FOCによるトルク制御は大変良好に動作したことから、当社では、システムの通信および診断、製品の強化のほかに、開発作業を、より清潔で、よりグリーンな生活ができる世界を作るための新しい発明に集中することができました」
※InstaSPIN、C2000、Piccolo、MSPおよびMotorWareはTexas Instruments Incorporatedの商標です。StellarisはTexas Instruments Incorporatedの登録商標です。その他すべての商標および登録商標はそれぞれの所有者に帰属します。