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フロリダ大学とTI、動作周波数の記録を塗りかえる高周波回路を発表

2008年02月12日

CORPPR-08-004 2008年2月12日
(米国時間2008年2月6日)抄訳

フロリダ大学(米国フロリダ州ゲインズビル)とテキサス・インスツルメンツ(本社:米国テキサス州ダラス、社長兼CEO:リッチ・テンプルトン、略称:TI)は2月6日、共同研究により、一般的な半導体トランジスタを用いて世界最高速の動作周波数を持つ高周波回路の構築に成功したと発表しました。この技術革新には、医療分野や環境モニタリング、軍用などで用いられる検出器・探知機の価格を大幅に引き下げることのできる可能性があります。

フロリダ大学とTIの研究者によるこの研究成果は、米サンフランシスコで開催された半導体に関する国際会議であるISSCC(International Solid-State Circuits Conference)において発表されました。

発表を行ったフロリダ大学の電子・コンピュータ学科教授で今回のプロジェクトの主任研究員でもあるKen O氏は、一般的なCMOS(相補型金属酸化膜半導体)を用いて動作周波数410GHzの回路を構築することに成功したと語りました。CMOSは、パソコンや携帯電話、携帯用各種電子機器の部品として使用されている、ごく一般的な集積回路に用いられている技術です。

動作周波数の測定は、ペンの先端程度のごく小さなオンチップ・アンテナを取りつけた回路を用いて、フロリダ大学の研究室で行われました。今回の記録である410GHzは、2006年2月に測定された200GHzというCMOS回路での最高記録を大幅に上回るものです。さらに注目すべきは、よりコストの高い代替材料であるリン化インジウムを採用した場合の最高記録を約60GHzも上回った点です。このような回路を可能とした背景には、TIが誇る最先端の製造技術である45ナノメートル(nm)CMOSプロセスがあります。

O教授は次のように述べています。「シリコンによる回路がリン化インジウムなどの新材料の回路よりも高い動作周波数を記録できたというのは、ここ30年ではなかったと思います。これはすばらしい技術革新です。回路を応用してチップを製造すれば、さまざまなタイプの検出システムやイメージング・システムを安価に構築できるようになるからです。従来の1/100以下のコストが実現できるかもしれません」

超高周波数の回路は過去にも構築されてきましたが、いずれも製造コストがかさむ特殊な材料を用いたものでした。これに対してCMOSは、半導体業界が集積回路の大半に採用している標準的なプロセスであり、今回の成功は、今後の高周波数デバイスの普及に道を拓くものとなります。

O教授はまた、次のようにも述べています。「この分野には広く応用のできる可能性がありますが、大量生産ができる技術で到達した人はいませんでした。今回は、テキサス・インスツルメンツが持つ最先端のプロセス・テクノロジーにより、CMOSを使って、今後5年程度で実用化できる可能性がこの分野にあることを実証できました」

この技術を用いて実現できるアプリケーションとしては、汚染物質や有害ガス、バイオテロの薬品などを高い感度で検出可能な、常時オンの環境モニタリング機器などが挙げられます。イメージング分野では、衣服の下に隠された武器やプラスチック爆弾などを検出できる手法の開発につながる可能性があります。皮膚ガンなどのガンの早期発見が可能な医療用機器の開発や錠剤のコーティングが均一な厚みとなるようにモニタリングする産業用システムの開発につながる可能性もあります。

2月6日に発表された論文は、Ken O教授のほか、フロリダ大学のEun-Young Seok氏、Changhua Cao氏、Dongha Shim氏、Daniel Arenas氏、David Tanner氏、そしてTIのChih-Ming Hungによるものです。

TIワイヤレス・ターミナル・ビジネスユニットの最高技術責任者、ビル・クレニック(Bill Krenik)は、次のように述べています。「大学における研究は、産業界の発展に欠くことのできないものです。今回、フロリダ大学とともに新たな領域を拓く研究成果を挙げられたことを、テキサス・インスツルメンツとして大変誇りに思っております。高性能と低消費電力というCMOSプロセス・テクノロジーの特長を活用した今回の回路は、安全や医療、環境といった分野でさまざまなアプリケーションを生む可能性を秘めたすばらしい結果を出してくれました」

今回の回路には、TIの低消費電力の45nmプロセス・テクノロジーが用いられました。このプロセスは、さまざまな技術の組み合わせにより数百万個単位のトランジスタを集積し、先端アプリケーションの処理に必要な高いパフォーマンスと低消費電力を併せ持つSoC (システム・オン・チップ・プロセッサ)を高いコストパフォーマンスで製造することができます。この技術はポータブル機器のエネルギー効率を高めバッテリー寿命を延ばすことを目的としていると同時に、最先端のマルチメディア機能を処理できるだけのパフォーマンスを高集積回路で実現します。

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