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ニュースリリース

TI、新しく開発した45nmプロセス技術により低消費電力に対応できる携帯電話向けチップを提供

2008年02月07日

SmartReflex™ テクノロジーの進化により、さらなる高性能と低消費電力を両立
携帯電話向けアプリケーションに最適化

CORPPR-08-003 2008年2月7日
2008年2月5日付 米国発表プレスリリース 抄訳

テキサス・インスツルメンツ(本社:米国テキサス州ダラス、社長兼CEO:リッチ・テンプルトン、略称:TI)は5日、米サンフランシスコで開催中の半導体に関する国際会議であるISSCC(International Solid-State Circuits Conference)において、携帯電話市場において大きな課題となっている消費電力の低減に対処するため、3.5G携帯電話向けベースバンド・チップとマルチメディア・プロセッサを世界で初めて45ナノメートル(nm)プロセスで製造するためのプロセスと設計技術を発表しました。このカスタム・ソリューションは、チップ・テクノロジーに関するTIのノウハウを活用し、性能の向上と低消費電力化を実現したもので、携帯電話市場向けのサンプル出荷は2007年第4四半期から開始しています。今回発表したTIの45nmプロセスには、さまざまな革新的プロセス技術と設計技術が活用されており、また消費電力と性能を管理する新開発のテクノロジー、「SmartReflex™ 2」が採用されています。この結果、高いマルチメディア機能を持つデバイスを小型化し、優れたデザインを実現できるようになりました。また、65nmプロセスと比較して性能は55パーセントの向上、消費電力は63パーセントの削減となります。

45nmプロセスの活用
TIのシニア・フェロー 兼 ワイヤレスチップ・テクノロジー・センター担当ディレクターのユーミン・コー(Dr. Uming Ko)は5日に論文を発表し、TIの低消費電力45nmプロセスを使用した新製品を紹介しました。このプロセスは携帯機器向け半導体市場のニーズ、特に当初はモバイル端末用として開発されたもので、液浸リソグラフィー装置と超低誘電率絶縁膜を用い、シリコン・ウェハー1枚で製造できるチップ数を65nmプロセスと比較して倍にすることに成功しました。また、現行の65nm低消費電力プロセスよりも高い性能を達成することができました。この性能の向上は、歪みシリコンなどの独自技術を組み合わせ、リークを抑えた45nmプロセスとすることで実現したものです。

TI初となる45nmワイヤレス・デジタル/アナログ・プラットフォームは、TIのDRP™ テクノロジーを採用し、12mm x 12mmのパッケージに数億個のトランジスタを集積しています。ARM11をベースとしたエンジンを持ち、高スループット通信と高性能マルチメディア・アプリケーションを処理できます。また、高いパフォーマンスを誇る『TMS320C55x™』デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)とイメージ・シグナル・プロセッサも組み込まれており、あらゆるワイヤレス規格に対応したモバイル端末で、家電並みの性能を楽しむことができます。またRFコーデックなどのアナログ・コンポーネントも数多く集積されています。

TIのワイヤレス・アドバンスト・テクノロジー担当バイス・プレジデント、ジェフ・ベレー(Jeff Bellay)は、次のように述べています。「本日の発表は、ワイヤレス市場の進化に対応する端末メーカ各社の迅速な開発をサポートするため、高性能で低消費電力のワイヤレス・ソリューションを提供するというTIのコミットメントを改めて示したものと言えます。シリコンの消費電力と性能を大きく変えることで、顧客各社は、消費電力を最小限に抑えつつ、驚くほどのマルチメディア機能を持った次世代型端末を提供できるようになります」

モバイル・マルチメディア環境ではさまざまなニーズが強まっていますが、45nmプロセス・ノードによって性能が大幅に向上すれば、理想的な形でこれらのニーズを満たすことができます。高品位(HD)ビデオの再生や録画を行ったり、3Dグラフィックスのゲームとテレビ会議など複数のアプリケーションを同時に利用したりできる端末を開発し、ユーザの利便性を高めることができるからです。同時に、低消費電力化によって端末に搭載する最先端の機能やアプリケーションを拡充できるほか、ビデオ再生や通話、待ち受けなどの時間を長くすることも可能です。

SmartReflex 2テクノロジーによる消費電力の大幅削減
総合的なパワー・マネージメントは、ワイヤレス市場にとっては特に重要であり、通信とコンピューティングがモバイル端末へ統合されつつあるなかで、バッテリー寿命に直接影響する深刻な課題となっています。TIは高性能で低消費電力の製品開発に向け、次々と技術革新を生み出し、市場をリードし続けています。技術革新により生み出されたプロセス・テクノロジーや設計技術は、TIが提供するあらゆるアナログ製品やDSP製品のポートフォリオに幅広く採用されています。

そのひとつがSmartReflexテクノロジーです。これはもともと90nmプロセスで導入されたテクノロジーで、TIのさまざまなハードウェア技術とソフトウェア技術を駆使し、システム・レベルでのパワー・マネージメント機能を実現しようというものです。その後継技術である SmartReflex 2 には、新機能として、TIが特許を持つABB(Adaptive Body Bias)、RTA(Retention ‘Til Access)メモリー、SmartReflex PriMerツールなどが搭載されました。45nmプロセスでSmartReflex 2テクノロジーを利用することにより、インテリジェントなチップ・パフォーマンスと低消費電力化の両立が可能になります。

ABBはインテリジェントなアダプティブ・テクノロジーで、モバイル端末のニーズに応じてプロセッサが最適なパフォーマンスと消費電力となるよう、基盤電位を自動的かつ動的に調節できます。ウェハーが複雑になることもコストが上昇することもありません。このテクノロジーを活用すれば、通常はプロセス・ステップの増加と製造コストの上昇を招く、異なるしきい値電圧を持つトランジスタの追加といった課題も解決できます。ABBでは、パフォーマンスを高めたい場合はフォワード・ボディ・バイアス(FBB)とし、消費電力を削減したい場合はリバース・ボディ・バイアス(RBB)とします。このようなアプローチを採用することで、回路構成のみで消費電力とパフォーマンスのバランスを最適化することが可能となり、しきい値電圧の異なるロジック・トランジスタを追加する必要がなくなります。

RTAなどの特殊なリーク管理機能を使えば、アクティブなプロセスに応じて低消費電力モードへの切り替えが可能になります。TIのRTAテクノロジーではメモリーをセグメントに分割し、メモリー・データを保持したままで電圧を低下させることができます。このようにすることで電力をシステム全体で有効活用できるため、電力消費の大きいアプリケーションの使用や待機時の消費電力の削減が可能になります。

ハードウェア面の技術革新に加え、TIでは、SmartReflex PriMerパワー・マネージメント・ツールの開発も行いました。SmartReflex PriMerツールはシステム・オン・チップ(SoC)の設計を自動的に行う一連のツールです。RTL(register transfer language)の生成を自動化し、正しく設計できるようになるため、市場投入に要する期間を短縮することができます。このツールを活用すれば、SmartReflexによる消費電力と性能の管理をシンプルな形で実装し、今後の製品に組み込むことが可能になります。

柔軟な生産体制
TIでは、お客様からの注文に対し、必要とされるレベルのプロセスを用いて大量生産が行えるよう、社内外を組み合わせた柔軟な生産体制を構築しました。TIでは、45nmのワイヤレスSoCソリューションを2007年第4四半期にサンプル出荷し、2008年には300mmウェハーによる量産に入ることを明らかにしていましたが、今回、低消費電力デジタル/アナログ製品の設計プラットフォームと45nmのプロセス・テクノロジーによって、その約束を実現することに成功しました。

* DRP、SmartReflex および TMS320C55xはTexas Instrumentsの商標です。すべての商標および登録商標はそれぞれの所有者に帰属します