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TIの筑波テクノロジー・センターが音質向上アルゴリズム3種類を開発

2006年03月09日

日本TI | TIの筑波テクノロジー・センターが音質向上アルゴリズム3種類を開発

~原音に近いナチュラルな高音質を実現
ホームAV機器の競争力を高めるTIの独自技術~
SCJPR-06-024 2006年3月9日
日本テキサス・インスツルメンツ(本社:東京都新宿区、社長山崎俊行、略称:日本TI)は、音質/音響を大幅に改善する2種類のアルゴリズムと2スピーカーでも仮想的にサラウンド音響空間を創出できるアルゴリズムを発表しました。圧縮データを扱うMP3プレーヤーなどのポータブル・オーディオ機器やカー・オーディオなど広範なコンシューマ向けAVアプリケーションに、短期間で競争力を高める機能をもたらします。
これら3種のアルゴリズムは、研究からソフトウェアの最適化まで一貫して、茨城県つくば市の筑波テクノロジー・センターにて開発されました。開発拠点を日本に置くことにより、日本のお客様に対する、より細かなサポートが可能になります。

今回発表されたアルゴリズムは、オーディオ専門の研究チームが開発にあたり、これまでに培ってきたオーディオ信号処理のノウハウが凝縮されています。
また、TI DSPに最適化されているため、システム・リソースを最大限に活用したアプリケーションの開発が可能です。さらに、日本TIはコア・テクノロジーを提供することを主眼においているため、お客様の仕様・開発プランにあわせた自由なチューニングが可能。音質にこだわるエンド・ユーザの要求に応えられる高性能なオーディオ・アプリケーションを短期間で市場投入できる環境が整います。

音質/音響を改善する2種類のアルゴリズム
1)高音域補完:圧縮により失われた高音域を補完するバンド幅拡張技術
MP3/AACなどの非可逆圧縮形式のオーディオ・アルゴリズムは、人間の耳では聞こえにくい16kHz以上の高音域を削除する傾向があります。従って、そのままでは再生した際に高音域が失われてしまいます。
インターネットによる音楽配信が普及している現在、より高い音質を求めるエンド・ユーザが増え、音質向上のニーズは高まる一方です。

日本TIが独自開発したバンド幅拡張技術は、圧縮によって欠落した高音域成分をリアルタイムに解析し、原音に近い形まで補完します。非可逆圧縮形式データであっても、オリジナル音源が本来持っていたクリアな高音を再現できます。またこの技術は、高音域成分を解析する際、圧縮による欠落か、もともと存在しなかったのかを瞬時に自動検知します。これによりエンド・ユーザは、その存在を意識しないで、またソースがオリジナル音源そのものの場合には、不必要な処理が行われないため不自然な音の違和感がなく、高音質が体感できます。さらに、対応する圧縮方式やビットレートに制限はなく、TVやFM放送、ポータブル・オーディオ・プレーヤーのライン接続からの音声入力などにも応用できます。

2)低音域補完:音を変質させずに重低音を強化する低音域拡張技術
AV機器が小型化/薄型化するほど、スピーカーは小口径化し、低音再生能力は低下しています。この問題を解決するために、従来はイコライザーで振幅増幅して低音を補ってきました。しかし、この手法ではオリジナルの音を変質させる上、無理に強調された重低音による振動が不快感を生むことにもなっていました。

日本TI独自の低音域を拡張するアルゴリズムは、音響心理学の原理に基づく技術で、原音に含まれる音声信号から擬似低音を作り出し、その擬似低音を聴かせることで重低音を認識させています。擬似低音を作り出すプロセスの精度を上げると、処理負荷が大きくなりますが、日本TIでは処理を省くことなく高精度ながら低MIPSで実現できる手法を開発しました。これにより、もともと音源ソースが持つ低音の豊かさを損なうことなく、エンド・ユーザは、実際のスピーカーの性能を超えた豊かな重低音を体感することができます。この技術はスピーカーのみならず、ヘッドフォンへの適応が可能で、中低域の再生能力が乏しいインナー・タイプのヘッドフォンにも効果的です。またスピーカー出力において、スピーカーそのものは不快な振動を発生しないため、近隣や周辺環境への影響もなくイコライザーによる低音強調よりも消費パワーを節約することができます。

仮想的にサラウンド音響空間を創出するアルゴリズム:フロント2チャンネル・スピーカーでマルチ・チャンネル・サラウンドを創出するバーチャル・サラウンド・テクノロジー
DVDや地上波デジタル放送など、5.1チャンネル音源のコンテンツが増えています。しかし、そうしたコンテンツを楽しむために必要なマルチ・チャンネル・サラウンド再生の環境を整えるには、物理的に5個以上のスピーカーならびにサブ・ウーファーの設置と、それに伴う煩わしいケーブルの配線というハードルを越える必要があります。そうした中、もっと気軽にフロントの2チャンネルのスピーカーだけでマルチ・チャンネルを楽しみたいというニーズが増えてきています。

日本TIは、頭部伝達関数の演算と、音源に近いほうの耳だけに音を届けるために必要なクロストーク相殺に必要な計算を、独自のアルゴリズムで低演算量ながら、最大の効果を得られるバーチャル・サラウンド・テクノロジー技術を開発しました。これにより、2本のスピーカーまたはヘッドフォンだけで、臨場感あふれるマルチ・チャンネル・サラウンド音響空間が実現します。広い空間が確保しにくい、日本の厳しい住宅事情に適した技術です。また、複数のスピーカーによる音響特性をリアルに再現していますので、長時間聴いていても疲れることはありません。

Aureusプラットフォームに対応
今回発表された3種類のアルゴリズムは、TIのオーディオ用DSPのAureus(オーリアス)プラットフォーム、フルデジタル・アンプの「PurePath Digital」(ピュアパス・デジタル)テクノロジーに対応しています。これらのテクノロジーでのアプリケーションを検討されているお客様は、いち早く高音質アルゴリズムの恩恵を手に入れることができます。

※ AureusならびにPurePath DigitalはTexas Instruments社の商標です。その他全ての商標ならびに登録商標はそれぞれの所有者に帰属します