
世界の人々の健康のために、最先端の科学を追求し、より良い社会の実現を目指す社員の想いを紹介します

アステラスは、患者さんの「価値」に向き合うため、社内で対話を重ねながら、価値観と行動規準を見直しました。新しい指針を定めた次に直面したのが、それを世界中の社員一人ひとりにどう届け、組織全体に浸透させていくかという課題でした。その挑戦は、決して容易なものではありませんでした。
この取り組みを支える中核となったのが、Human ResourcesのExecutive DirectorであるTirell Hendley(以下、ティレル)、Employee Experience & Organizational Effectiveness LeadのPamela Pinela(以下、パメラ)、そしてProject LeadのSamantha Yuen(以下、サマンサ)です。3人は、新しい指針がどのようにアステラスのカルチャーとして根付いていったのかを語ります。
※この記事は、アステラスが新たな価値観と行動規準をどのように形作ってきたのかを紹介するストーリーの続編です。前編をまだお読みでない方は、ぜひこちらからご覧ください。
--- 大規模でグローバルな組織に、新しい価値観を浸透させていく上で、どのような戦略を重視したのでしょうか?

Tirell Hendley
Executive Director,
Human Resources
ティレル:私たちが重視していたのは、できるだけ多くの社員に、新しい価値観と行動規準について学んでもらうことでした。ただし、このようなトレーニングを義務化してしまうと、どうしても規則やコンプライアンスといった堅い印象を与えてしまい、かえって逆効果になる可能性があります。そこで最初から、トレーニングは任意参加とし、eラーニングやゲーム形式のアプリケーションを併用しながら、メッセージを自然に理解してもらえる工夫を重ねました。
リーダー向けと一般社員向けに、それぞれ異なるトレーニング教材を用意しましたが、任意参加であったにもかかわらず、最終的には92%という高い参加率を達成することができました。

Pamela Pinela
Employee Experience &
Organizational Effectiveness Lead
パメラ:新しい価値観と行動規準を浸透させるためには、アステラスへの入社前を含めて、ライフサイクルのあらゆる段階に組み込むことが不可欠だと考えました。この「組織における価値観と行動」はアステラスのコーポレートサイトに明示しており、私たちが何を大切にし、どのように働く組織なのかを伝えています。
そして、その一貫した指針を採用プロセスにも反映しました。面接ガイドを再設計し、応募者が過去の実務経験の中で、アステラスの新しい価値観と行動規準をどのように実践してきたかを確認できる質問を取り入れています。これにより、応募者個人の能力だけでなく、アステラスのカルチャーへの共感も踏まえた採用判断が可能になりました。
入社時には、価値観と行動規準を学んでもらう機会を提供しており、入社研修では、その重要性や、日々の業務の中でどのように実践するかを説明しています。また、リーダー向けには、チームが日常業務の中でこれらの価値観をどのように行動に移し、どう強化していくかを考えられるように、シンプルで実践的なツールキットも用意しました。

Samantha Yuen
Project Lead
サマンサ:当初は、いくつもの壁がありました。その一つが、長年にわたって組織の中で育まれ、実践されてきた数多くの行動指針です。そこで私たちは、マネジャーが新しい価値観を一方的に押し付けるのではなく、社員自身が受け入れ、自分たちのものとして捉えられるような、ボトムアップのアプローチを採用しました。
その中心的な施策となったのが、代表取締役副社長 人事担当、Chief People Officerである杉田 勝好が主導したロードショーです。世界各地で実施されたこの取り組みは、新しい価値観と行動規準を、単なる理論やスライド上の言葉としてではなく、人や日常の行動と結び付けて理解してもらうことを目的としていました。
この変革は、人事部門と広報部門が連携し、各事業部門やユニットを巻き込んだ、全社的な取り組みでした。私たちは各部門に「チェンジ・チャンピオン(変革の担い手となる社員)」を任命し、ツールキットや資料を提供しました。彼らはその資料を基に、それぞれの組織や部門に最も響く形でメッセージを調整し、伝えてくれました。
--- メッセージを広めるために、特定の国や部門が取ったユニークな取り組みの例はありますか?

サマンサ:まず挙げられるのが、イタリアのチームです。 彼らは、この活動に初期段階から主体的に取り組みました。新しい価値観と行動規準を、イタリアならではの視点でどう実践できるかを示す、独自の「ローカルツリー」を作成しました。さらに、価値観と行動規準を提示した新しいパネルをオフィス内に設置するなど、職場環境にも反映させることで、日々の業務の中でそれらが身近に感じられる工夫を行いました。こうした一つひとつの取り組みによって、新しい価値観と行動規準は、イタリアのカルチャーの中で自然に共感を得られるようになりました。
パメラ:イタリアでのこうした印象的な取り組みに加えて、私たちはアステラス全体で、すでに新しい価値観と行動規準を体現しているリーダーたちに光を当てることにも注力しました。エンゲージメントサーベイの結果を基に、価値観と行動規準の実践において特に高い評価を得たリーダーたちにインタビューを行いました。
そこで私たちは、リーダーが日常業務の中でどのような行動を率先して実践し、そのリーダーシップがチームにどのような前向きなインパクトをもたらしているのかを丁寧に聞き取りました。これらの回答をトップダウンの指示として示すのではなく、組織内から生まれた「手本」として称えています。リーダーから得た言葉や実例は、「価値観と行動(Values and Behaviors)」に関する社内ポータルで紹介しています。社員同士が互いに学び合い、実践している同僚からヒントを得て、実際の行動につなげていくための場を創り出しました。
このアプローチにより、新しい価値観と行動規準は、単なる理念ではなく、組織の中で実際に体現されているものとして社員に共有されてきました。「手本」となる実例を知ることが、組織への浸透を後押しする大きな要因となりました。
--- 社員の皆さんは、この変革にどう反応しましたか?また、変革の過程で生じた課題をどのように乗り越えましたか?
サマンサ: 最大の難関は、これまであった66の行動指針を、3つの価値観と5つの行動規準に整理・集約することでした。そこで私たちは、広報部門のリーダーたちと連携し、新しい価値観と行動規準が、これまで社員が慣れ親しんできた過去の指針と、どのようにつながっているのかを丁寧に説明しました。こうした取り組みが、変化に対する戸惑いや抵抗感を和らげることにつながりました。併せて、アステラスという組織が、過去5年間で大きく進化してきたことも繰り返し伝えました。「新たな指針は、トップダウンの指示ではありません。これからの未来に向けた、新しい働き方の土台となるものです。そして、実際の行動として形にしていくのは、社員一人ひとりにかかっているのです」と、粘り強く伝え続けました。
ティレル: 多くの社員は、これまで複数の指針が点在していたことを理解していました。そのため、今回の整理は前向きに受け入れられたと感じています。カルチャーの根幹を見直す取り組みであると明確に打ち出したことで、社員はその意図を汲み取り、一致団結してくれました。
パメラ:特に印象的だったのは、多くの社員が従来よりも指針が簡素になったことを高く評価していた点です。66の行動指針が、3つの価値観と5つの行動規準に整理されたことで、何が本当に重要で、それが日常業務とどう結びついているのかが、格段にわかりやすくなりました。
あるリーダーシップ・ワークショップでは、新しい価値観と行動規準は、すでにチームの中で自然に実践されているという声が多く聞かれました。それは、私たちが社員に対して、新しい自分に生まれ変わることを求めているのではなく、すでにうまく取れている行動を意識して、そして一貫して続けていくことを再認識する良い機会となりました。そして議論の焦点は、「新たな価値観と行動指針は何か」ということではなく、「どうすれば、これを浸透できるか」へと移っていきました。
こうした「簡素化」、「一貫性」、そして「本質を捉えている」という実感が、社員が変化を前向きに受け入れ、新しい指針を自分たちの力を引き出す土台として捉える、大きな後押しになったと感じています。
---変革がうまく機能していると、どのような場面で実感しましたか?また、定着していることを示す具体例はありましたか?
ティレル:変革を実感したのは、社員が日常のコミュニケーションの中で、新しい価値観と行動規準に自然と触れるようになったときです。社員同士の会話の中で、「いかに患者さんにインパクトのある『価値』を創造できるか」が語られるようになりました。それは、新たな価値観と行動規準が、言葉として掲げられたり、資料として共有ドライブに保存されたりしているだけのものではなく、日々の行動として実践されていることの表れだと感じています。
パメラ:私も、日々の会話や会議の中で、価値観と行動規準を示す言葉が自然に使われるようになったときに、変革が軌道に乗ったと実感しました。公式なコミュニケーションに限らず、社員同士が成功につなげるための行動を語り、意思決定を行う際の共通言語になっていると感じています。
ワークショップでも、リーダーたちは「これは何を意味するのか」ということよりも、「新たな価値観と行動規準をどうすれば、もっと一貫して模範的に社員に示すことができるのか」という問いを多く口にするようになりました。価値観と行動規準の意味はすでに理解され、いまや実践へと移行してきており、変革につながり、定着してきていることが実感できました。
やがて、新しい価値観と行動規準は取り組みという枠を超えて、私たちの働き方を形づくる共通言語として受け止められるようになりました。日々の行動の積み重ねこそが、カルチャーの変革が本物になると実感できる瞬間なのだと感じています。

サマンサ:今回興味深かったのは、小規模な拠点や事業部門が、新しい価値観と行動規準を早い段階で行動に移す傾向にあったことです。イタリアをはじめ、北欧諸国、カナダ、ブラジルやメキシコといったラテンアメリカなどの拠点が挙げられます。通常、こういった取り組みを展開する際には、規模の大きい拠点が主導し、規模の小さい拠点がそれに続くことが多いからです。小規模な拠点は、この新しいアプローチを、ビジネスを成長させる機会として前向きに捉えてくれたのではないかと感じています。
新しい価値観と行動規準は、日々の業務の中で根付き始めています。私たち一人ひとりの行動が、アステラスのカルチャーを形作り、その積み重ねが患者さんの「価値」へとつながっています。