
世界の人々の健康のために、最先端の科学を追求し、より良い社会の実現を目指す社員の想いを紹介します

今日のヘルスケア業界は、まさに変革の時代を迎えています。科学技術の急速な進歩は、これまでの常識を覆すような治療法を次々と生み出しています。同時に、患者さんも、より一人ひとりに合わせた包括的な医療を求めるようになってきています。このような大きな変化の潮流を捉え、アステラスは、企業文化そのものを変革するための、長期的かつ広範な戦略計画を積極的に推進しています。その核となるのが、企業としての価値観と行動規準を再定義し、それらを全世界の社員一人ひとりに体系的に浸透・定着させていく取り組みです。
この改革の舵を取るのが、 Human Resources(人事部門)のExecutive Directorである Tirell Hendley(以下、ティレル)です。ティレルが率いるチームは、従業員エンゲージメントやタレントマネジメント、パフォーマンス管理から、学習・開発、組織変革に至るまで、人事戦略領域全体を担っています。本記事では、この新たなプログラムに込められた想いと、それが患者さんにもたらす「価値」を、ティレルの言葉で紐解いていきます。

Tirell Hendley
Executive Director,
Human Resources
「私たちの企業活動の中心には、常に患者さんがいます。その想いは、会社のビジョンに深く根付いています。私たちの行動はすべて、どうすれば患者さんの人生をより良くできるかに向けられるべきです」
「2026年、私たちは新たな経営計画を発表し、始動させます。この経営計画を成功させるためには、社員一丸となって従来の価値観と行動を変えることが求められます」とティレルは続けます。「そのため、新しい経営計画を達成させるには、私たちが大切にする価値観と行動について、全社共通の規準を持つことが重要です」
アステラスの大きな強みの一つは、社員一人ひとりが持つ革新的な精神です。常に新しいことに挑戦し、組織に活気をもたらす取り組みを自ら生み出そうとする、その情熱が会社の原動力となってきました。一方で、こうした創造性とエネルギーの豊かさゆえに、全社として取り組みの方向性を揃えることが難しい場面もありました。その結果、長年にわたり、社内の各部署でそれぞれ異なる行動モデルが個別に形成されていったのです。
「例えば、リーダー向けの行動モデル、一般社員向けの期待行動モデル、営業やR&Dといった部門別の行動指針、役割を終えつつある価値観のモデルまで、さまざまなものが存在していました」とティレルは振り返ります。「調査の結果、社員が拠り所とすべき行動指針が、合計で60以上にものぼっていることが分かりました」
これほど多くの行動指針が並立していては、社員が心を一つにすることはできません。こうした課題認識をエグゼクティブ・コミッティと共有したうえで、ティレルのチームは、散在していた価値観と行動を整理・統合し、再定義するプロジェクトに着手しました。
その改革は、エグゼクティブ・コミッティによるワークショップから始まりました。アステラスのトップリーダーたちが集い、「今日のビジネス環境において、高い成果を出し続ける組織であるために、どのような行動が不可欠かというテーマを徹底的に議論しました。そして、既存の指針を一つひとつ丹念に検証した結果、最も本質的で重要な3つの価値観へと絞り込みました」

「当初、3つの価値観は『イノベーション』『誠実さ』『エクセレンス』でした」とティレルは説明します。「しかし、一部の文化圏では、『エクセレンス』という言葉が、『完璧でなければ前に進めない』という誤ったプレッシャーとして受け取られる可能性があることに気づきました。そこで、代表取締役副社長 人事担当、Chief People Officerである杉田勝好の提案を受け、『エクセレンス』の代わりに『変革への挑戦(インパクト)』という言葉を採用することにしました。なぜなら、本当に重要なのは完璧さではなく、確かな変化を生み出す力だと考えたからです」
続いてティレルは、3つの価値観それぞれに込められた想いを、次のように語ります。「まず『イノベーション』。患者さんの『価値』を創造し、提供するための新たな方法を、常に模索し続ける姿勢です。次に『誠実さ』。いかなる時も、正しいと信じることを行うということに尽きます。そして『変革への挑戦』。明確な目的意識をもって行動し、確かな変化を生み出していこうとする、私たちの強い意志を表しています」
次のステップは、3つの価値観を、日々の具体的な行動へと落とし込むことでした。ティレルのチームは、アステラス全社から幅広くリーダーを選出し、ワークショップを実施しました。
「私たちは意図的に、多様なメンバーを集めました」とティレルは説明します。「性別や年代、経験年数の異なる社員を織り交ぜ、さまざまな部門や地域から参加してもらいました。そうすることで、そこで交わされる意見が、私たちの多様な組織を真に反映したものになると考えたのです」
ワークショップでの議論を通じて、5つの行動が定義されました。「勇気」「迅速な対応」「One Astellas」「成果に拘る」、そして「責任感」です。さらに、これらの行動を組織全体でどのように実践し、定着させていくかについても議論が重ねられました。最終的にまとめられた提言は、エグゼクティブ・コミッティと取締役会に承認されました。
その後、ティレルのチームは、5つの行動それぞれについて、社員に求められる具体的な行動例を作成しました。例えば「勇気」については、「率直に意見を伝えて挑戦すること」や「賢いリスクテイクにより失敗から学ぶこと」と定義されました。
そして、「One Astellas」は、大規模で複雑な組織が直面しがちな課題に、正面から向き合う姿勢を表しています。社員には、多様な視点を取り入れ、他部門やチーム、各地域のステークホルダーと積極的にコラボレーションすること。そして、意見の対立が生まれた際には、敬意を持って建設的に解決することが求められています。
「責任感」においては、オーナーシップや誠実さ、信頼といった要素が重視されました。社員一人ひとりが、与えられた担当業務やプロジェクト、および成果の達成に対して、責任を持ち、自らの意思決定がもたらす結果を引き受けることが期待されています。約束したことを必ず実行し、常に誠実に行動することで、周囲からの信頼を築いていくことも重要な要素です。
「これらの行動は、チームリーダーが体現し、育んでいかなければ、組織には根付きません」とティレルは語ります。「そのため私たちは、5つの行動それぞれに対して、チームリーダーに求められる具体的な行動規準を、一対のものとして定義しました」
「迅速な対応」のもとでは、チームリーダーには、チームの進捗を妨げる障害を速やかに取り除き、十分な情報に基づいて、確実な行動を取れるよう支援することが求められます。さらに、チームの取り組みが会社の戦略目標や、患者さんのニーズにどう結びついているのかを示すことで、チームのパフォーマンスと士気を最大限に高めることが期待されています。
また、「成果に拘る」においては、チームリーダーは、成功に不可欠な行動を見極め、そこに優先的にリソースを配分することが求められます。そして、プロセス、データ、技術を整理し、シンプルな解決策を見出すことで、複雑な課題を解決に向けて、チームを支援します。

「私たちは、チェンジマネジメントの専門家と連携しながら、社内の知見も活用し、この新たな規準をどのように展開し、浸透させていくべきかを検討していきました」とティレルは説明します。「どうすれば視覚的に分かりやすく、魅力的に伝えられるのか。どのようなストーリーで語るべきか。社内外でどう発信していくのか。そして何より、これらの行動をどうすれば組織に根付かせることができるのか。そうした問いを丹念に突き詰めていきました」
企業文化の変革に対して、社員が一歩引いて、冷めた目で見ることは少なくありません。その点について、ティレルは次のように語ります。「私たちは、この価値観と行動に関する規準は、今後2〜3年は変えない、と宣言しました。それが、会社として本気の取り組みであることを示す上で重要だったと思います」
そして、これらの価値観や行動が、社外コンサルタントの発案ではなく、アステラス社内から生まれたことも、大きな意味を持っていました。「価値観や行動は、コンサルタントによる既製品ではなく、アステラスという土壌から生まれた自社製であり、私たちのあり方や信条そのものを体現するものにしたかったのです」
価値観と行動に関する規準を全社員へ公表する前に、ティレルのチームは、世界各地の人事部門やコミュニケーション担当者とも連携しました。「私たちの創り上げたビジュアル、変革プラン、そしてメッセージの一つひとつが、社員の心に本当に響くものになっているか。それを確かめるため、彼らと共に、あらゆる角度から徹底的に検証を重ねたのです」
では、この新しい価値観と行動は、患者さんにどのような価値をもたらすのでしょうか。「私たちは、『変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの『価値』に変える』というVISIONに基づき、すべての活動を行っています」とティレルは語ります。「そのVISIONに命を吹き込むのが、『誠実さ』『イノベーション』『変革への挑戦』という3つの価値観です。しかし、この価値観も、日々の行動に体現されなければ、絵に描いた餅にすぎません。この価値観を、患者さんの『価値』へと転換させるためには、『勇気』『迅速な対応』『One Astellas』『成果に拘る』『責任感』という5つの行動を実践しなければなりません。これは、全社員が日々の業務で実践できることだと考えています」
医療を取り巻く環境が変化する中で、アステラスは、全社一丸となって、患者さんにとって意味のある成果を届け続けることに注力していきます。
この記事は、後編へと続きます。後編では、この新たな「組織における価値観と行動」を、アステラスの多様性に富んだグローバル組織全体へ、いかにして戦略的に共有し、浸透させていったか、その道のりを詳しく描いています。ぜひ後編も合わせて、こちらからご覧ください。