アステラス製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長:畑中 好彦、以下「アステラス製薬」)は、自社の選択的FLT3/AXL阻害剤gilteritinib(ASP2215)について、国際共同第III相試験の最初の患者さんへの投薬が米国で開始されましたのでお知らせします。
がん細胞の増殖に関与する受容体型チロシンキナーゼであるFLT3およびAXLを阻害するgilteritinibは、AML患者の最大1/3で認められるFLT3の2つの遺伝子変異、遺伝子内縦列重複変異(ITD)とチロシンキナーゼドメイン変異(TKD)の両方を阻害します。
欧米で実施されたgilteritinibの第I/II相試験では、1日1回20~450 mgの用量範囲を評価する用量漸増コホート*1)で認められた有効性に基づき、各用量の拡大コホートが並行して実施されました。2015年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された第I/II相試験の予備的な結果では、80 mg以上投与されたFLT3変異陽性患者106名において、57.5%の全奏効率ならびに47.2%の複合完全寛解率(完全寛解+血小板の回復が不完全な完全寛解+血球の回復が不完全な完全寛解)が認められました。さらに、すべての用量におけるFLT3変異陽性患者の寛解持続時間中央値は18週であり、80 mg以上での全生存期間中央値は約27週でした。この試験中にgilteritinibと関連性が否定できない有害事象(10%以上)は、下痢(13.4%)、倦怠感(12.4%)、AST上昇(11.3%)でした。450 mgにおいて患者2名に用量制限毒性(グレード3の下痢とALT/AST上昇)が認められ、最大耐量(MTD)は300 mgに決定されました。
gilteritinibの第III相試験は、一次治療後に再発、または治療抵抗性のAML患者を対象とし、gilteritinibと救援療法*2)を比較する、オープンラベル*3)、多施設共同、無作為化試験です。本試験は、骨髄あるいは全血においてFLT3活性変異が陽性であるAML患者369名を組み入れます。被験者は2:1の割合でgilteritinib(120 mg)と救援療法に無作為に割り付けられます。本試験の主要評価項目は全生存期間です。
米国以外での第III相試験は、各国の準備が整ったところで組み入れを開始していきます。詳細については、以下のウェブサイトをご覧ください。https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02421939
なお、gilteritinibは日本において、10月27日に厚生労働省より、「先駆け審査指定制度」の第一回の対象品目の一つとして指定を受けました。
本件については、米国において現地時間10月28日に対外発表をしています。
以上
*1)コホート:同じ属性または同じ条件に置かれた集団のこと。統計で用いられる用語の一つ。
*2)救援療法:主に血液がんにおいて、治療の効果が得られない場合(治療抵抗性)、または再発・再燃した場合に用いる治療のこと。救済療法、サルベージ療法と呼ばれることもある。
*3)オープンラベル試験:被験者にどの治療が割り付けられたかについて医師、被験者、スタッフ全員に知られている試験のこと。
